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「健康に関する作文」表彰式

2023年10月26日 15時00分

本日、松山市民会館で開催された松山市学校保健研究大会において、「健康に関する作文」の表彰式が行われました。松山市内の全小中学校から応募された作文の中から、本校1年生の山内  絆さんの作文が中学校の部で最優秀賞に選ばれ、舞台上で作文の朗読をしました。心が温かくなる素晴らしい内容に、会場からも大きな拍手が送られていました。久米中HPの掲載について、本人とご家族の了承を得ましたので、ご紹介します。

   「母の味」      久米中学校1年 山内 絆

 「今日の昼ご飯何にしようか。」中学生になった初夏、母が僕に尋ねた。僕は張り切って「素麺!」と答え、母の顔を見た。母は少し微笑んで「うん」とだけ言い、キッチンに向かった。「駄目よ」と否定はされなかった。だから今日こそは僕のリクエストが並ぶかもしれない。うきうきしながらご飯を待った。だが、食卓に現れたものは白く透き通った麺ではなく、スタミナの塊、茶色くギラギラした「豚の生姜焼き」だった。「やっぱり…。」漂ってくる香りで薄々分かってはいたが、僕の期待は崩れ去っていった。

 僕には幼い頃小麦のアレルギーがあった。命に関わるほどの重症なものではなかったが、几帳面な母は、徹底して小麦製品を除去してくれていた。特にパンや麺類は、幼い頃は全く口にしていなかった。しかし母はその代わりに、米粉でシフォンケーキを焼いたり、ホットケーキやシュークリームなどいろいろなスイーツを作ってくれたりした。また、米粉の皮の餃子を作ったり、米粉パンを探して購入したり、いろいろな工夫をして「食べられない」を「食べられる」に変えてくれた。中でも母の作るシフォンケーキは絶品で、いくらでも食べられる。母のおかげで当時の僕は、食べたいものを無理して我慢している、という感覚を少しも感じていなかった。小学校に入学する頃には数値も随分良くなり、正常値に近いものとなった。給食では制限なく食べてよい、との許可がでた。皆と同じものが食べられることが、本当にうれしかった。母と喜んだことは今でも覚えている。しかし油断は大敵だ。食べ過ぎると逆戻りすることがあるため、給食では食べるが、それ以外では食べないようにしよう、と母と約束した。

 先日、中学で新しくできた友達と遊びに出かけた。その日は目当ての物を購入しただけで、何か食べたり飲んだりはしなかった。正直ほっとした。「ハンバーガーを食べよう。」と誘われたらどうしよう、とずっと考えていた。どうやって断ろうか、それとも断れずに食べてしまったら、母に言わないといけないよなあ、といろいろ考えた。今まではいつも家族がそばにいて僕を守ってくれていた。友達がクッキーやドーナツを持って遊びに来たとき、僕が困った顔をして何も言えないでいると、母がさりげなく「ごめんね。小麦粉のお菓子は控えてるんよ。ありがとう。」と話してくれていた。友達も「そうなんや。飴とかグミは大丈夫?」と自然に受け入れてくれた。

 これから先、行動範囲や交友関係が広がるにつれて、ハンバーガーに限らず、ラーメンやたこ焼きを食べに誘われる機会がやってくるだろう。そのときに僕はどうすればよいのだろうか。そんなとき母が教えてくれた。

 母も子供の頃僕と同じアレルギーを抱えていた。母は小学校の頃も小麦製品を食べられず、給食のパンは食べず、おにぎりを持参していたそうだ。当時は食物アレルギーのある生徒は珍しかったそうで、自分だけ違うものを食べていることが恥ずかしくて嫌で、アレルギーがあることを隠したかった、と言っていた。でもそれは間違いだったとも。食べられないものがあるくらいで、友達に嫌われることはないし、話せばみんな分かってくれる。相手に伝えること・相談すること・勇気を出すことの大切さを教えてくれた。母の体験談が、今そっと僕の背中を押してくれている。ほんの少し、気持ちが楽になった。

 僕にできることは、今の自分自身の体と心を受け入れることだ。まずはもう一度ありのままの自分を見つめ直したい。今後悩んだときは、僕を守ってくれた家族や、僕を受け入れてくれた友達のことを思い出し、ちゃんと自分の気持ちを伝えられる強い人間になりたいと思う。そして他の誰でもない自分の体のことだからこそ、大事な友達には自分の口で伝えるべきだと思う。きっと気持ちは伝わるはずだ。そして、今までの貴重な体験を生かし、心の強い人間になりたい。また、友達を受け入れられる優しい人間になりたい。

 母は今でも我が家に米粉を常備している。僕に食べられるものが増えた分、以前より回数は減ったが、時おりシフォンケーキを焼いたり餃子を作ったりしてくれる。そして家族も同じものを食べて、みんなおいしいと言っている。同じものを食べ、おいしいと言い合えることが、幸せなのだ。僕は母にはもちろんだが、家族にも感謝している。

 今は夏休みだ。給食のない夏休み。そしてぼくの誕生日のある夏休み。その日はキラキラと輝く白く透き通った麺と決めている。しかもくるくる流しながらみんなで取り合って、口いっぱいに頬張るのだ。世間では素麺は夏休みの昼食の定番のようだが、僕にとっては誕生日の特別なごちそうだ。一年間頑張ったご褒美だ。ケーキはもちろん米粉のシフォンケーキだ。楽しみで仕方ない。

この日のために何度も朗読の練習をし、表彰式の前日と当日の朝には、学校の体育館の舞台上でもリハーサルをしました。そのかいあって、堂々とした朗読で大変立派でした!!山内くんの真面目さや素直さ、ご家族の愛情に溢れた作文に感動しました。

ホールいっぱいに人がいる中での朗読はとても緊張したことと思いますが、大役をクリアしてまた一つ大きく成長した山内くんの今後の活躍にこれからも期待しています。お疲れさま!!(^-^)ノ

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